TRAILBLAZERS – TAILORING RECONSIDERED

あなたがスウィングダンスの復興論者か60年代を舞台にしたドラマ『マッドメン』のマニアでもない限り、ここ数十年間で、かつてあったドレスコードがゆるやかに解体されてきた歴史を快く受け止めているでしょう。同じようなかっちりとした格好をした男たちが大挙して都会で通勤する様子を昔のニュース映像で見るのはそれなりの高揚感をもたらすのは事実ですが、実際に周りと同じ格好をしなければならないというかつての現実は、それほど魅力的なものではないでしょう。

[1] 未開の地を開拓する者たちと、その幡導となるブレザー

周囲へ順応することよりも自己表現が重視されて、多かれ少なかれ好きな服を着ることができる現代を生きる私たちは幸運、と言えるでしょう。ただ悲しいことに、私たちが堅苦しいファッションの枠組みから解放されたことによって、一方で「テーラードジャケット」という犠牲者が出てしまった。過去20年間に渡って、私たちのワードローブの後方に追いやられた「ブレザー」は愛されることなく過小評価され続け、メンズジャケットの世界から姿を消してしまいました。

ブレザーの役割についてじっくりと考えを巡らせれば、このアイテムが私たちのワードローブから追放されたような状況にあることは、驚くべきことではありません。実際に多くの私たちにとって、ブレザーは学校の制服や学校の先生にまつわる記憶と直結し、少し威圧的に感じるスタイル。スーツには、たとえそれが就職面接や冠婚葬祭などのためであったとしても、常にワードローブにその居場所があります。その一方できちんとしたフォーマルな場ではスマートさに欠け、日常生活では堅苦しすぎるという中途半端な立ち位置にあるように思えるテーラドジャケットですが、一歩ひいて改めてよく見てください。思い込みを捨て、じっくりと観察してみるとこのジャケットは実は男性が所有できるアイテムの中で最も汎用性が高く、スタイリングしやすいものであることがわかります。テーラードジャケットへの門戸を閉ざす人は、仕立てることの楽しみを自ら放棄している、ということにいち早く気づくべきです。それでもまだ納得がいかない、ということであれば、テーラードジャケットへの正しい道しるべとなる「何か」を探ることをお勧めします。

頼るものが何もないなかで、ブレザーを普段の着こなしにさりげなく取り入れることを想像するのは難しいと思われるかもしれません。なぜならそれは、今日ブレザーを格好良く着こなすロールモデルとなる人物がそう多くないから。ただし、時代を遡って80年代、90年代に目を向けてみると、そのような人はゴロゴロと転がっています。カジュアル・ブレザーを擁護する人者の筆頭として挙げられるのは、おそらく唯一無二のアメリカの俳優、リチャード・ギアでしょう。彼の全盛期のユニフォームは、洗いざらしのブラックジーンズに、ダークなポロシャツを合わせ、落ち着いた高級な素材のだぼっとしたブレザーを羽織ったスタイル。それは気取ることなく洗練されたスタイルで、肩肘張らない究極にクールなルックです。このスタイルの決め手となるテーラードジャケットは、着心地の悪いアイテムではなく、実用性のないアイテムでもないことを覚えておくと良いでしょう。適切にデザインされたテーラードジャケットは、着心地の良さと動きやすさを念頭にきっちりとパターンが組まれ、どのような体系の人でもスラッとしたフラットなシルエットを実現します。毎日のシャツやニット、Tシャツの上に羽織ることもできるし、何より、私たちのワードローブにあるチョアジャケットと同じようにポケットがたくさん付いているので、スタイリッシュなうえに、とても便利なアイテムなのです。

仕立ての良いジャケットの真の価値を知っていたもう一人のクールな男性は、80年代のアメリカ映画界で活躍した俳優、ミッキー・ロークでした。80年代の彼は、リチャード・ギアと同じようにブレザーをデニムシャツやTシャツの上にさりげなく羽織ったりして、カジュアルにスタイリングしていました。時には素肌に直接着ることでブレザーの下の胸元を露出していましたが、これはかなり上級者のスタイリング。誰彼にもできるものではなく、挑戦するべきか否かは慎重に判断しなければならないと、ここではっきりと言っておくべきでしょう。

チョアジャケット、ボンバージャケット、ジレ、トラッカージャケット......どれもこれも素晴らしいアイテムですが、ブレザーを見過ごすと、アウターウェアの選択肢はかなり狭まってしまいます。これら様々なスタイルのアウターの快適さや着やすさなどの魅力をすべて兼ね備えたうえで、洗練されたセクシーな魅力が加わっているのが、スタジオニコルソンのMizumi Jacket 。シャツやネクタイをワードローブからひっぱり取り出す必要はありません。すでにあなたが着ている服の上にこのジャケットを羽織るだけで、その結果を実感できるでしょう。ワークウェアにちなんだ巨大なパッチポケットが特徴的な Conde Jacket についても同様です。あなたがブレザーを心の中に受け入れることができた暁には、もう一歩踏み込んで、ブレザーのスマートなエッセンスを主張しつつ、それを美しく伸長させた Notch Coat のようなクラシカルなオーバーコートを着こなせるようになる日も近いはず。

こうして新たなスタイリングの可能性へ向けて、無限の扉が広がるのです。

The Mens Model wears Mizumi Jacket .